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『HUGっと!プリキュア』完結に寄せて

1月27日の放送を持って『HUGっと!プリキュア』が一年間の物語を終えた。
プリキュアシリーズはアイカツ!シリーズやプリティーシリーズほど熱を入れて見ているわけではないので、「プリキュアシリーズとしてどうであったのか」についてはシリーズそのものを愛する人や見識の深い人間に任せるが、「プリティーリズムシリーズから五年以上『坪田文』という脚本家を追いかけてきた人間として『HUGっと!プリキュア』はどうであったか」という点について述べておくと、実に坪田文脚本作品らしいプリキュアであったように思う。
自分が今回の『HUGっと!プリキュア』で特に「坪田文脚本作品らしい」と感じたのは、ジョージ・クライを「倒すべき敵」ではなく「一人の人間」として描いたことだった。ジョージ・クライは本作の敵組織であるクライアス社の代表取締役社長で、未来世界を時間停止に追い込んで滅ぼした諸悪の根源とも言える存在である。その目的は「幸福な『今』という一瞬を停止させることで、永遠に幸福が失われない世界を創造すること」であり、未来世界はそんなジョージの計画通り幸福なまま時間停止を迎えてしまった。
ジョージがなぜこのようなことを目論むようになったかについて作中では詳しくは描かれていないが、描写を見る限りでは恋人を失ったことに起因するようだ。
「恋人が死ぬ」という現実を目の当たりにしたからこそ、『幸せになるのか不幸になるのかも分からない不確かな未来』よりも、『確かな今』のままでいた方が不幸で確定するよりはまだ救いがある。
そんなジョージの考え方を否定できるかというと自分には出来ない。未来は不確かなものなので幸せな未来の可能性と同じ分だけ不幸せな未来の可能性も持っている。であるのならば「幸せな今」で時間を固定し、破滅するかも知れない未来が到来しない世界を作るのはそれはそれで一つの選択ではあるだろう。
とはいえ、「一人の人間が全人類の未来を決定する」というのは良いことではないので、「それでも未来を選んだ全人類によってジョージの決断は否定させる」という展開を迎えるわけなのだが、ではジョージ自体が否定されたのかというとそうではなく。ジョージ自身の心にもまだ未来に期待する気持ちが残っていた事で、彼もまた未来へと足を進める一人になれたのが本当に美しい結末だった。極めて人間臭い動機から時間停止という蛮行に挑んだジョージだからこそ、全否定される敵ではなく人間として向き合う。この辺りのまとめ方は凄く良かったし坪田文らしい。クライアス社の社員達も全員「未来へと進む(なので最後は未来世界に帰る結末になる)」となるのも論理的で本当によくここまでロジカルにまとめたものだと感動したのだが、この結末を見て思い出したのは『プリティーリズム・ディアマイフューチャー』だった。
『プリティーリズム・ディアマイフューチャー』はプリティーリズムシリーズ第二作となる作品で、坪田文はシリーズ構成補佐として関わっている。自分にとってはオールタイム・ベスト級の作品であり、「この作品と出会えたから今自分がある」とまで言い切れる作品なのだが、『HUGっと!プリキュア』を見ていてこの『プリティーリズム・ディアマイフューチャー』を思い出すに至ったのは、『プリティーリズム・ディアマイフューチャー』のラスボスを務めた阿世知欽太郎もまたジョージ・クライと同じく「不確かな未来よりも確実な今と過去を選ぶ」と行動した存在だったからだろう。
もっとも阿世知欽太郎はジョージとは違って現代の人間だし、「『皆が笑顔になれる最高のエンターテイメントを作る!』という夢を追いかけたものの必死になればなるほど周囲からバカにされ、仲間にも裏切られた」という経験から未来を否定するようになった存在なので、似ているのは「過去の辛い体験から未来を否定して今を選ぶ」という部分と「主人公達の説得によって明るい未来を夢見て歩む仲間になった」というところだけなのだが。なので実際に描かれた物語は両者とも似ているけれど別種のものだ。
『HUGっと!プリキュア』は「またね」とジョージが何気なく口にしていた言葉から未来を信じる意思を掘り起こす事で決着としたし、『プリティーリズム・ディアマイフューチャー』は「夢は諦めなければいつか叶う」「未来は明るく輝いている」「仲間がいるからここに立つ事ができた」という綺麗事を体現しているプリズムスタァ達の存在を強く打ち出す事で決着としている。そもそもエンタメ世界のキャストであるプリズムスタァと伝説の戦士プリキュアと性質が異なるものなので、経緯も決着も全く異なるものになるのが普通なのだが、両作とも見ている人間としてはその「プリキュアとプリティーリズムの違い」が面白くて滅茶苦茶楽しんでしまった(なおどっちが好きかと言われると『プリティーリズム・ディアマイフューチャー』だが、まあこれはもう仕方がない。「綺麗事を言うな!」からの一連の流れは心の額縁にずっと飾ってる言葉なので)。

これは個人的なことではあるが、トラウム役の土師孝也さんがああいうコミカルなキャラクターをやると滅茶苦茶面白い声優であることを示してくれたという意味でも『HUGっと!プリキュア』は面白かったと思う。『Fate/Ground order』にて新宿のアーチャーとしてああいう演技はされているが、ゲームとアニメとでは見る機会が異なるので……。

そして本日から『スター☆トゥインクルプリキュア』が始まっている。
イマジネーションと宇宙の物語はどうなっていくのだろうか。また一年楽しんでいきたい。
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