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0が1になった瞬間――『ラブライブ!サンシャイン!! Aqours First LoveLive!』

廃校の危機を救うために立ち上がった九人の少女達のスクールアイドルな青春を描いたマルチメディアプロジェクト『ラブライブ!』。
『ラブライブ!サンシャイン!!』はそんな『ラブライブ!』の姉妹企画作品だ。
静岡県沼津市内浦にある浦の星女学院を舞台に、「伝説のスクールアイドル」として語り継がれるμ’sに憧れ、「彼女達のように輝きたい!」と願う九人の少女達「Aqours」のスクールアイドル活動を描いた本作は企画が開始するや否や話題が沸騰。瞬く間に人気を獲得し、2016年7月から9月にかけてアニメが放送されるなど破竹の勢いで快進撃を続けてきたわけなのだが、これまでミニライブや「スペシャル課外活動」と称するファンイベントを開催しながらも一度もソロライブは開催されてこなかった。その実力に関してはこれまでのイベントを見る限りでも疑いの余地がないにも関わらずである。
そんなAqoursのファーストソロライブが2017年2月25日と26日に開催予定と案内されたのはアニメ放送期間中のこと。諸々に渡りをつけてライブビューイングで鑑賞してきたのだが、Aqoursは期待通りのものを見せてくれた。
開幕を飾るのはアニメのオープニング曲だった「青空Jumping Heart」。そこから畳み掛けるように2ndシングルの表題曲である「恋になりたいAquarium」に繋がり、以降はアニメの楽曲を全体を貫く柱に据えながら「ソロライブなのに二日間開催」という圧倒的利点を活かして畳み掛けるように進行していく。
クリスマスミニライブ辺りから大幅に強化されたカメラワークも冴え渡り、「恋になりたいAquarium」のプロモーションアニメで見られた「ステージの真上からフォーメーションの変化を見せる」という演出もしっかりと再現。アニメがある楽曲は基本的にはアニメを踏襲する形で演出されていることもあり、そのカメラワークの「分かりっぷり」はAqours、ひいては『ラブライブ!サンシャイン!!』と言う作品への深い理解を感じさせる。
アニメ映像がない楽曲もワンポイントで歌っていないキャラクターのパフォーマンスを抜いてきたり、MCでキャスト(主に斎藤朱夏)が面白い動きをしてきたらしっかりと押さえてきたりと愛にあふれており、ライブビューイングで見ていたからこそ面白いところは多分にあったように思う。
またライブ演出そのものも素晴らしく、μ’sのときも見られた「指先の動きと画面のアニメーションを連動させる」はきちんと完成した形で見せてくれたり、センターステージを正面から見据えると花火がきちんと演出されていたりと見どころは多かったのだが、とりわけ「想いよひとつになれ」はAqoursを知らない人にも必見の内容であった。その演出とは「ステージ上に置かれたピアノをアニメで同曲を歌うことが出来なかった桜内梨子役の逢田梨香子がその場で弾く」というもので、ステージ上で一つのパフォーマンスをやっている姿はアニメを見ていれば見ているほど胸を打つパフォーマンスであった。
このパフォーマンスは二日目では一度失敗してしまったものの、伊波杏樹のフォローや仲間達の励ましで再起。頭からやり直してやり通してくれた。
終わった後の震える指先。
間違いなく本物で真実の完璧な桜内梨子の演奏だった。

なおいつものアイコンアニメはリップシンクに表情の変化がLIVE2D的に行われているなど今回からは立派なアニメーションになっていて、『ラブライブ!』から追いかけてきたファンにとっては未知との遭遇としか言いようがない驚きの映像になっていた事を付記しておく。あれ、現地取材とかしていて結構よかったです。

しかしながら楽しい時間はあっという間に過ぎていくもので、終盤に差し掛かるに連れてこのライブのテーマが姿を表す。
そのテーマとは今回のライブのタイトルにもなっている「Step! ZERO to ONE」、つまりアニメで何度も繰り返し述べられていた「0から1に」である。
アニメの物語が楽曲の合間に差し込まれ、ライブはアニメの物語を補完/アニメはライブの物語を補完し、「0から1になる物語」を双方が生み出していく。
その二つで一つの物語がクライマックスを迎えたのが「MIRAI TICKET」だ。
アニメ最終話の寸劇をキャスト達が忠実に再現し、その流れを継承する形で披露された「MIRAI TICKET」はまさに「Aqours」というユニットが背負ってきた物語そのもの。アニメのAqoursと演じるキャスト達が作り出すAqoursが「0から1に」を合言葉に突き進み、その中で得たものの全てがこのステージの中にあった。
「輝く」とは「今を楽しむ」ということ。
双方が今この瞬間を楽しみ、0を1にしたいと願い、1にするために流した汗は間違いなく「スクールアイドルの輝き」であった。
そしてアニメで紡がれた物語の最後を飾った台詞とともに始まる「君のこころは輝いてるかい?」。
「0から1に」を合言葉に前へ前へと進んできた彼女達が間違いなく「1」になった瞬間に立ち会えた喜びは「感無量」の一言に尽きる。ファーストライブだからこそ、「1になった」という事実に特別な意味を感じ、自然と涙がこぼれていた。

アニメ二期も2ndライブツアーも発表され、ファーストライブで確かに得た1の未来からその先へと歩み始めたAqoursの九人+九人。
彼女達が頑張る先にあるものが1以上に実りがあるものかどうかは分からない。しかしファーストライブで見せてくれた「今よりももっと良いものであることに疑念を抱かない姿」を信じて、これからも応援していきたいと思う。

余談だが、「誰が一番良かったか」と言う話については高海千歌役の伊波杏樹を上げたい。
前述したように、二日目の「想いよひとつになれ」は一度失敗しているのだが、逢田梨香子のミスにより曲が止まった時すぐに彼女の元に駆け寄って落ち着くまで抱きしめて「もう一回やろう」と励まし、終わった後は「これは生だからできる体験ですから!」とポジティブな言い換えをして「大事な局面でのこの後まで引きずりそうな逢田梨香子のミス」を観客にとって価値のある特別な体験へと昇華していた。
あの局面で深刻に捉えすぎないように逢田梨香子にフォローをしつつ、観客にはポジティブな言い換えをして「特別なものを見れたんですよ! 次はないですから!」と認識させてきた彼女は間違いなく今回のライブのMVPだ。賞賛に値するし、彼女のあの動きを見れただけで今回のライブは全て肯定できる。素晴らしかった。


今期のソーシャルゲーム原作アニメについてのアレコレ

ソーシャルゲームを原作とするアニメは時間を重ねるごとに増加傾向にある。
『神撃のバハムートGENESIS』の頃は物珍しさがまだ残っていたが、毎クール一本以上が普通となった今となっては全く少しも珍しいものではない。漫画原作やライトノベル原作と同じ程度には「普通」のことで、アニメ化が発表されても「ああ、あそこは儲かってるんだなぁ」とか「えっ、アニメ化というカードを切れるほど儲かってるの!?」とかぐらいの感想しか出てこないのだが、今期2017年1月スタートのソーシャルゲーム原作アニメはアプローチや作品の在り方などで面白い作品がとても多い。
例えばセガの同名作品が原作の『チェインクロニクル ~ヘクセイタスの閃~』は「アニメとしてしっかりと面白いものを作ろう」というスタッフの気概を感じさせる一本で、「原作第一部終盤で原作の主人公が負けたとしたら」というifストーリーをアニメで展開している。
元々ダークファンタジーの要素も入り混じった作品なので、原作主人公ユーリがラスボスに負けた後の世界は重く苦しいし、ユーリに対する風当たりも非常に強い。しかしアニメ版主人公であるアラムに引っ張られる形で主人公が再起し、世界を混乱に陥れた黒の軍勢に立ち向かう展開は熱いし、アニメ版主人公を立てたからこそ描けるユーリが黒の軍勢サイドの手に落ち、黒騎士と化す展開は原作プレイヤーにとっても衝撃的なものであった。原作第二部では「黒騎士に変身する力」をもっとヒロイックな展開で手に入れていたわけだが、その要素をこうしてアレンジして盛り込んできたのには原作プレイ済みの人間としては「驚愕」の二文字に尽きる。セガはやっぱりすごいなあ。
満を持してアニメ化ということであればスクウェア・エニックスの『スクールガールストライカーズ』がある。
原作からして並行世界理論を用い、「プレイヤーごとに異なる世界を持っている」という理屈を展開しているため、アニメの物語も世界も「共通の基本設定を使用したアニメ独自のもの」ということで、細かい設定の違いについてはある程度無視できるのは圧倒的なアドバンテージであり、一話完結のコメディとしても悪くはない作品に仕上がっているように思う。まあ推しているキャラが登場している人にとっては解釈違いを起こしていることも多いので超地雷にもなりうる恐ろしいカードだと思うが。気をつけよう、「アニメ世界だから」という言い切り。
メディアミックスの一環として展開している『アイドル事変』と『BanG Dream!』は正直「ベタな方向性で来たなぁ」という印象であるが、前者はサービス開始直後で後者はまだサービスを開始していない事であるため、「より多くの人に作品について知ってもらおう」という事に主眼を置いていると言う意味では最善手だろう。『アイドル事変』のソーシャルゲームは人を選ぶゲームデザインだと思うが、楽曲の魅力はあるため頑張って欲しいし、『BanG Dream!』はバンド物ということでサービス開始前から「版権楽曲でも遊べる」と面白い事をやっているため、こっちもアニメの熱をそのままゲームに反映できたら良い結果になるのではないだろうか。唯一の懸念は「ゲームのリリースをアニメに合わせるやり方は『ケイオスドラゴン』みたいな展開を招きやすい」ということか。頑張ってください。
そして今期のダークホースだった『けものフレンズ』もソーシャルゲーム原作のアニメ化作品である。もっともソーシャルゲームは既にサービス終了済みなのだが。あの辺の終了に関しては本当によく分からないもので、サービス開始から一年半ほど続いた事を考えると赤字を垂れ流していたわけではなさそうな辺りが謎である。出来もそんなに悪くはなかったんだけどなぁ。少なくとも某講談社系出版社発のソーシャルゲームよりは百倍よく出来てたのに……。
話をアニメに戻すと、「ポストアポカリプス物的世界」「動物達が人間のような姿になったけものフレンズ」などと言った原作に存在する要素を上手く組み合わせ、シリーズ全体を貫くテーマを担う存在として「かばんちゃん」という存在を投入した『けものフレンズ』は凄い作品ではないかと思う。元になっている動物たちの特徴を活かした芝居付けも上手く、ネガティブな要素をあまり感じさせない。たまに登場するネガティブな要素もコミカルな要素と組み合わせて昇華している点も素晴らしい。
現在七話まで放送済みだが、話数を重ねるごとに加速度的に面白くなっていく『けものフレンズ』は今期重要なタイトルの一つとみて間違いないだろう。今からでも見て欲しい。

ところで来季は『グランブルーファンタジー』と『神撃のバハムート VIRGIN SOUL』『アイドルマスター シンデレラガールズ劇場』とサイゲームス系タイトルの放送が三本も存在する事態になっている。わざわざ同時期に三本もやることでどういうメリットが生まれるのか全くわからないが、ひとまず『グランブルーファンタジー』のあの商法はサイゲームスだから出来るやり方過ぎるのでちゃんと面白い作品になることを祈りたい。







『リルリルフェアリル』種族を超えた恋愛を巡るりっぷとローズの描写について

『リルリルフェアリル~妖精のドア~』は人間(作中ではヒューマル)と妖精(作中ではフェアリル)の交流と絆を描いた物語だ。
ヒューマルとフェアリル。異なる世界で暮らし、異なる文化を持つ二つの種族と交流は友情もあり、自分の夢を追う熱さもありで種族の壁を乗り越えて強い絆で結ばれたヒューマルとフェアリルの作る「バディ」という関係性は多様的で、実に面白い。
自作した服やアクセサリを販売する洋服屋を営む青葉ゆかりとバディになったすみれに、かのとはるととバディになり夢を追いかけはじめたひまわりとダンテなどどれも印象深いバディだが、その中でも特に重要なのは「りっぷと望」「ローズと優斗」だろう。
なぜならこの二組は「種族を超えた恋愛」という物語を背負わされた者達としてあまりにも対照的な描写がされており、「種族を超えることの難しさ」と「結ばれた時の喜び」を実感させる二組だからだ。

りっぷもローズもヒューマルへの恋心を持っていた。
りっぷは生まれてくる時に見た望の姿に、ローズは初めてヒューマルの世界に来た時に恋に落ちた。その想いは二人の頑張る理由として力になっていたわけだが、ヒューマルとフェアリルの恋愛には「人間と恋愛をしたフェアリルは羽根を失い、その恋愛から想いが冷めてしまうとフェアリルは消滅してしまう」という大きな障害があった。
この事実を知らされたりっぷとローズは大きなショックを受けるのだが、そのショックの後に取った行動によってローズとりっぷの立ち位置は大きく変化し、二人は対極に位置する存在となった。

ヒューマルの世界への扉を開くことに成功したローズは優斗の元へと向かった。
「片思いでもいい。せめて最後に……」という思いで優斗を見守っていたローズであったが、真正面からぶつかっていくローズの真剣さと他者への慈愛は優斗の心を動かし、二人はバディとなった。「器用そうに見えて、対人関係についてが不器用気味」というローズだからこそ真正面からぶつかり、一度蓋をしようとした想いに身を任せる事で「バディ」と言う最高の関係性を手に入れて自分の幸せを勝ち取ることができたのだ。

一方りっぷはというと、自分の本心には気づいているものの、ある理由により望に本心を打ち明けられずに封じ込める道を選んだ。その理由とは「自分は望が探し求めたフェアリルだから、正体を明かせば愛してくれるだろう。しかしそれは私を愛してくれているわけではない」というもので、望のフェアリル愛が純粋であることを知っているからこそ、りっぷはその純粋な想いに苦しめられる。
りっぷに『プリティーリズム・レインボーライブ』の天羽ジュネのような「それでも私は愛に生きる」と言い切れる強さや、手段を問わずに好きなものは手に入れる悪女の気質があれば、このような苦しみを味わうことはなかっただろう。しかしりっぷは健気で純粋な性格で独善的な考え方を持っていない。だから苦しい。だから辛い。だから「本心を封じ込める」という道を選ぶ。
あまりにも悲恋だ。その想いを封じ込めて、「皆を笑顔にするアイドル」という夢を追いかけ始めるりっぷの姿は何とも痛ましい限りである。隣りにいるローズは想いを通じ合わせる喜びを得たというのに……。

悲恋の色が濃くなってきた本作だが、まだ希望は残されている。なぜなら、望の口から全てが語られたわけではないのだから。
りっぷの恋は結ばれるのだろう。本作は皆の笑顔で終わるのだろう。
その笑顔の世界に繋がる筋道がどうなるのだろうか。見守りたい。


Appendix

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■DREAM WING(C87新刊)


■プリズムアライブ(C86新刊)
44829979_m.jpg
とらのあなで委託中

■スイッチオン!(C85新刊)
アイカツ3
とらのあなで委託してました

■RUNWAY
表紙
とらのあなで委託してました

プロフィール

  • Author:水音
  • tumblrの方が積極的に更新してるマン。
    面倒くさがりなので、Twitterのほうが捕まります。

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    @を半角にして下さい

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